Linshowter (リンショーター)
自分のお気に入りの土地の事を、人はよく「第二の故郷」と呼びます。台湾は私にとって、その「第二の故郷」だと感じる場所です。人は親切だし、料理は美味しいし、たまに日本語の通じる人に出会ったりもする。
少しお腹が減ったなと思ったら、屋台の並ぶ通りや夜市に行って、美味しそうな食材を指差せば事足りる。それら全てが美味しく、それも香辛料の利いたエキゾチックな味ではなく、もちろん大量生産された加工食品の味でもない。少し懐かしさも感じる、たっぷり出汁の利いた味。そんな料理を食べていると、自分が写真を撮りに来たこともすっかり忘れ(ダメじゃん自分)、海外旅行の緊張もすっかり緩み、日本にいる時よりもリラックスした気分になれるのです。
そんな台湾で、ある時「小林髪廊」という美容院を見つけました。その看板には漢字で書かれた店名以外に、英語で“Show
Lin Beauty Salon”と記されていました。その看板を見た時、私は「小林」という名前が中国語で“ショーリン”と発音される事を思い出したのです。と同時に、中国語で「小林(ショーリン)」を英語で“Show
Lin”と表記するのだと知りました。
“Show Lin”の“Show”という単語は、言うまでもなく英語で「見せる」「展覧会」を意味する“show”と同じ綴りです。そもそも写真やデザイン等、私の活動の全ては、他人に「見せる」事で初めて意味を持つ仕事ばかりだと思います。その「見せる」を意味する“show”という単語と自分の名前が、異国の地、それも「第二の故郷」と思っているこの台湾で、こじつけだと思いますが、一つに繋がったように感じたのです。
こじつけと言えばイメージが悪いですが、私は自分の行っている、写真やデザイン、アートの仕事が、自分でも客観的に見てみると、まるで「ほら吹き」の様に、こじつけと、他愛もない嘘をついている様に感じることがあります。でもそんな「ほら吹き」の様に取るに足らない事に人はワクワクし、新しい価値が生まれる可能性が秘められているのではないでしょうか。
最近になって私は、ようやくアートとは何なのかという問いに答えが出せました。
たった、これだけの事です。分かりにくいと言われるアートを美術と訳したので、ますます分かりにくかったのかもしれません。哲学者が真理を探求する人間だとすると、アーティストは新しい価値を探す人間という事になるでしょうか。
その行為は、他人から見るとまるで「ほら吹き」の様に見えるかもしれません。なぜなら、未だ世の中では「価値」と認められていない事を「価値」ある事だと公言するのですから。そして、そんな「ほら吹き」の事を英語で“line-shooter”と言います。
もうお分かりでしょう?“Linshowter”は“Show
Lin(ショーリン=小林)”を逆さにして、“line-shooter(=ほら吹き)”を連想させるように作った名前です。
自分の「第二の故郷」から新たな一歩踏み出して「新しい価値」を見いだせるように(と言うのはハッキリ言って大袈裟ですが)、これから、この名前を自分の活動の中で使っていきたいと思います。まずは、このホームページから、ゆくゆくは自分の会社でも作ろうかな。(嘘です、って言うかきっと無理です)
P.S.
余談ですが、吉田秋生の「BANANA FISH」に登場する、チャイナ系ストリート・キッズのボスは「ショーター・ウォン」、彼が死んだ後にボスの座に着く少年の名は「シン・スウ・リン」でしたね。
P.S.(Part 2)
最近の台湾へ行った人なら、このホームページの中に、すぐに「これ、台湾だ」と分かるデザインを見つける事ができる筈です。これから台湾にいく人は台湾の町歩きをお楽しみに。(未確認ですが、マレーシアでも同じものがあるという情報を入手!)
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